2010.12.15

丸田祥三氏"棄景写真剽窃被害"訴訟、和解協議不調に終わる

この訴訟の経緯や詳細については、当ブログのこちらのリンクに飛び、下の記事から順にお読みください。

 しばらく音沙汰がないなと思っていた、「丸田祥三氏"棄景写真剽窃被害"訴訟」。原告の丸田氏が、和解協議が不調に終わり、判決公判が12月21日に行われることを自身のブログで明らかにした。

判決延期の経緯

 この記事は、原告側の解釈で書かれているので、ここでは客観的な事実を抜き出してみる。

  • 裁判所から和解勧告を受けた。
  • 丸田氏は、もし原告敗訴となった場合、盗作容認の前例となることを危惧し、和解交渉に応じることにした。
  • 被告の小林伸一郎氏の代理人は、和解案として丸田氏が自身のブログ(裁判についてのブログではなく写真作品を発表しているブログ)を閉鎖し、第三者による 検証ブログや、小林氏に批判的なブログについても削除させること、トークイベント「盗作かもしれない」を開催したことについて謝罪、動画を削除することな どを求めた。

 丸田氏側が提示した和解案はこの記事には書かれていなかったが、丸田氏の友人である切通理作氏がTwitter上で言及していた。その内容を引用しする。

risaku   切通理作       
「お金も謝罪もいらない、ただ当該写真が掲載された同じ本のどこかに丸田氏を参考にしたと記してもらいたいということだった」

 また、切通氏は、小林氏側の和解案について、丸田氏が記さなかった内容についても言及している。

risaku   切通理作
「小林伸一郎側の出した和解案は写真家として丸田氏が著作を持ち活動していることを認める、(中略)あとは丸田氏側に、盗作問題について書いたブログやネット記事、動画などを本人が書いたものでないものも含めて削除しろという要求だった」

risaku   切通理作
「丸田氏は(中略)自分が書いた記事に関しては、小林氏側にチェックしてもらい、問題があると指摘された部分に関しては削除や変更も射程に入れて検討する、と返答した」

 しかし、結局協議は平行線をたどる。丸田氏のブログの要約に戻ろう。

  • 被告側は当初代理人のみ出席していたが、裁判長から本人出席を求められ、5回目ごろの協議に初めて小林氏自身が出席した。
  • 小林氏は、"先行して作品を発表した原告に敬意を表しては"という裁判所側の提案を拒否した。
  • その日をもって、和解協議は打ち切りとなった。

 丸田氏の記事から読み取れる事実関係は以上。

 裁判所側の提案や、小林氏側の「第三者のブログ等を削除させよ」という要求は、僕自身が直接見聞きしたわけではないので、100%この通りのニュアンスだったかはわからない。だが、その分を割り引いて見ても、小林氏側の主張・対応は相当に強硬、高圧的という印象を持つ。

「丸田氏が著作を持ち活動していることを認める」というのは、そもそも被告が認定するような筋合いの事柄ではないし、本件の争いとも無関係だ。

 「丸田氏は自身のブログを削除し、第三者が記したブログ等についても削除させる」というのも、仮にこの通りのニュアンスだとすれば、原告はとうてい飲めない。検証サイトは丸田氏の要請で制作されたものではないし、言論の自由を侵害するものだ。

 できるとすれば、「被告側と和解したので、今は争いがない旨と、できればその経緯を掲載してほしい」と"お願い"することくらいだろう。もっとも、法廷にいなかった僕の立場では、被告側の提案が実はこの程度のニュアンスだった可能性も否定できない。

 被告側の強硬な態度は勝訴を念頭に置いたものと推測され、極めて残念だ。訴訟上のテクニックに終始している印象で、「誤解を解く」誠意が感じられない。

 一方、原告側提案の「当該写真が掲載された書籍に丸田氏を参考にした旨を記す」という内容も、被告には飲めないだろう。金や喧嘩目的ではないという丸田氏の心意気はよくわかるが、謝罪や賠償はなくても、これは「盗作を認めよ」ということに他ならない。是非はともかく現時点の被告の立場では応じられないと思う。

 ともかく、和解協議は物別れに終わった。判決公判は、12月21日16時から、東京地方裁判所627号法廷で行われる。

 都合がつく限り、僕も傍聴に行くつもりだ。

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2010.08.15

退院から2週間のダイジェスト。

えーと、7月31日に退院してから今までの歩み?を、写真でだらだらと紹介します。

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 まず、これは7月31日の昼食、カレーピラフ。これが、今回の検査入院最後の食事でした。

 この日の14時半に退院し、いったん自宅に戻った後、友人を誘って食べたのが、これ。

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 うな重。

 ……わかりやすすぎだろ、おい。

 いやあ、病院でも、土用の丑の日には鰻入りちらし寿司が出たのだけれど、僕は検査前の絶食中で食べられなかったのです。「何も今日絶食にしなくても」と泣いた時の、主治医の嬉しそうな表情は一生忘れません。

 翌8月1日は日曜日。早速東京カルチャーカルチャーへ出向き、SUPER BELL"Zさんの「鉄道ナイト8」に参加してきました。

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 、て、あれ、また食い物? この日の限定メニュー、煮込みキムチうどん。この時期の、僕の欲求がよくわかりますね。

 「鉄道ナイト」では、全く予定になかったのですが、「飛び入りゲスト」という形で壇上に上げていただきました。やはり、喋る仕事は楽しいですね。ベルズファンの皆さん、失礼しました。

 週明けから、本格的にお仕事再開。3日には、埼玉に出かけたついでに、新三郷のららぽーとをひやかしてきました。

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 武蔵野線武蔵野操車場跡にオープンしたららぽーと新三郷。北斗星に連結されたこともある豪華客車「夢空間」を保存・展示していることでも知られています。フードコート附属のフリースペースとして公開されており、嬉しくなって写真を撮ったら、警備員が飛んできました。そんなに怪しかったんでしょうか……。

 5日木曜の夜は、久しぶりにあった餃子友だちのnagaさんと、神楽坂へ。

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 ……いや、さすがにこれは食べませんでしたよ。

 6日は、レポした通り渋谷Milkywayで「プチロック」のライブ。

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 なんか、ライブっぽくない方がいるなあと思っていたら、「空気神社」がある山形県朝日町の役場の方でした。

 8日の日曜は、都電荒川線で、オオゼキタクさんの「納涼電車ライブ」。

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 それほど詰め込むわけでもなく、アットホームで楽しかったな。中井精也さんご一家もいらっしゃっていました。

 そして、8月10日は職安通りの新宿ネイキッドロフトで行われた、丸田祥三氏のトークイベント「盗作かもしれない」に参加。

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 この件については、いろいろと思うところがあるのだけれど、とても今回のダイジェスト記事では語れないので、稿を改めます。

 こんな感じで、退院から2週間が過ぎました。

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2010.04.26

丸田祥三氏「棄景写真剽窃被害」訴訟に思う

 長文です。すみません。

 今回、丸田祥三氏と小林伸一郎氏の訴訟を実際に傍聴した。率直な感想をひと言で言えば、

「"盗作"が誤解であるなら、なぜ小林氏はこれまでそれを解こうとしなかったのか」

 ということだ。

 丸田氏が小林氏を提訴したのは、2009年1月。だが、いきなり提訴したわけではなく、それ以前から抗議を行っていた。丸田氏によれば、約10年前、小林氏が『廃墟遊技』を出版した後に抗議の手紙を出版社気付けで送ったそうだ。

 仮に、これらの作品の類似が全くの偶然で、小林氏に他意がないのだとしたら、なぜこの時に誤解を解こうとしなかったのか。 

 月刊『創』2008年5月号(4月発売)でこの問題が取り上げられた時、小林氏は「これまでに丸田氏(略)からその件で直接抗議を受けたことはありません」と回答している。これが、「出版社経由で抗議を受けたことならあるが、直接言われたことはない」という意味だとすれば、問題の存在を10年前から認知していたことになる。なぜ誤解を解く努力をせず、放置したのだろう。

 あるいは、何らかの理由で出版社から丸田氏の手紙が届いておらず(これはこれで大問題だが)、『創』の取材で初めて問題を知ったのかもしれない。それでも、この時点から提訴まで1年近くも時間があった。『創』で記事になり、ネットでも検証サイトができるほど騒ぎになったにも関わらず、どうして事態を解決しようとしなかったのか。

 小林氏の作品が全くのオリジナルであると仮定した場合でも、写真集を先に出版したのが丸田祥三氏であるという事実は変わらない。

 創作の世界では、先行作品に対して敬意を払うのはごく基本的なことだ。作品を制作する場合には、類似企画・先行作品がないか気を配るのは基本中の基本だし、抗議を受けた場合は、仮にそれが誤解・言いがかりの類であったとしても、誤解を解くべく努力しなくてはならない。

「このような指摘を受けたが、自分はそのような意図はなかった。納得してもらえるよう、十分に説明したい」

 早い段階で、小林氏から直接こうした行動があれば、丸田氏もそれ以上ことを大きくすることはなかったはずだ。逆に、丸田氏と小林氏による、コラボレーションだって企画できたかもしれない。ファンとしては、そうあってほしかった。

 この点で、小林氏の一連の対応は誠意を欠いていたと言わざるを得ない。

 反対尋問で小林氏がとった行動も、残念だった。

 小林氏は、「解説文の調査・執筆はスタッフがやったことで、自分は関知していない」、「10年以上前のことなので覚えていない」という発言に終始した。

 「全く覚えていない」というのも、人を雇う立場の人としてどうかとは思うが、これはまあ、もしかしたらそういうこともあるかもしれない。

 しかし、いくら世間から「先生」と呼ばれるベテラン写真家といえど、自分の写真集に掲載される文章について、「一切関知していない」ということがあり得るだろうか。出版社の編集者にすら会っていないということが、あり得るだろうか。

 これが真実だとすれば、小林氏の写真集は、極めて無責任な作り方をされていたということになってしまう。

 小林氏の写真集は、この問題が存在しなかったとすれば、優れた作品であると思う。それが小林氏が述べたような姿勢で制作されていたとは、僕はできれば信じたくない。

「自分は写真家、芸術家であるから、その施設が何であるか、由来はどうであるかは大した問題ではない。精錬所と選鉱所を間違えたとしても、写真の価値には関係がない」

 小林氏の主張は、このようなものだった。この考え方自体は、僕も同意できる。そういう考え方があってもいいと思う。

 では、なぜ、そのどうでもいい解説文を自身の写真集に掲載したのだろう。小林氏が、施設の由来は大した問題ではないと考えていたのなら、撮影場所と撮影年だけ記載すればよかったはずだ。自身の意図に反して、出版社の意向で掲載されてしまったのだろうか。駆け出しの写真家ならそういうこともあるかもしれないが、解せない話である。

 小林氏の証言姿勢は、「盗作を行った疑い、あるいは盗作に関与した疑い」について、法的な責任を回避するには有効だったのかもしれないが、その代わりに写真作家として多くのものを失ってしまったように思う。

 では、僕は丸田氏を全面的に支持しているのか、というと、そうでもない。僕自身、学生時代から氏のファンである。問題にされている作品を比較しても、丸田氏の作品はほかの人が決して持ち得ない独特の輝きを放っており、別物と思っている。

 作品がよく似ている、という点以外のところで、いろいろと苦しい思いをされてきたのはわかる。しかし、読者・ファン・鑑賞者の視点に立てば、丸田氏の作品は、小林氏の作品がどんなに類似していても、その価値はいささかも減じていない。

 「写真家は写真で勝負するべきだ」と言っているファンの多くは、そう言いたいのではないだろうか。

 また、本来カラーの作品をモノクロに変換して比較することについては、賛同できない。

 「カラーの作品が雑誌などのモノクロページに掲載されたこともある」という主張はわかるが、モノクロで掲載された媒体が提示されないと、読んだ人間に「丸田氏は、小林氏をこき下ろすことが目的なのか」という印象を持たれかねないと思う。

 正直に言って、裁判の行方がどうなるかは僕にはわからない。 丸田氏は、単なる盗作問題ではなく、もっと大きな視点で、「写真界に横行するパクリ容認の風潮」について、問題を提起したのだと思う。この点については大いに支持したいし、自分にもそういう気持ちがないか、戒めていきたい。

 出版界にもはびこる問題に一石を投じる提起として、今後も注目していくつもりだ。

2010年4月26日16:45追記
丸田氏より指摘があり、一部、私の認識不足・誤解がありましたので、『廃墟エクスタシー』についての記述を削除、前後の文章を修正しました。また、「僕は丸田氏の主張を全面的に支持しているのか、というと、そうでもない」のうち、「の主張」を削除します。訴訟上の主張に限定した話ではなく、疑問、あるいは不思議に感じた部分もある、という趣旨に訂正します。コメント欄に丸田氏からの指摘がありますので、併せてご覧ください。

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2010.04.25

丸田祥三氏 「棄景写真剽窃被害」訴訟4

 原告側から小林氏に対する反対尋問が始まった。

 最初の質問は、小林氏が本格的に廃墟を撮り始めた時期だった。

「小林さんが本格的に廃墟を撮り始めたのは、90年代前半と考えてよろしいですか」
「違います。80年代からです」
「こちらで撮影時期をリストアップしたところ、『廃墟遊戯』の場合1989年が最も早い時期で、『廃墟漂流』に1987年撮影の写真がありましたが、いずれも数点に留まります。1992年以降、急激に数が増えているようですが」
「発表されていない写真もあります」
「こちらの証拠品には、『90年代前半から廃墟を意識し……』と書かれているようですが」
「全国をまわって廃墟を撮影するようになったのは、80年代半ばからです」

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丸田祥三氏 「棄景写真剽窃被害」訴訟3

 15時05分から審理が再開された。今度は、被告である小林伸一郎氏に対する尋問だ。小林氏が、この件について公の場で発言するのは、事実上初めてである。

 まずは、被告側弁護士からの質問に答える主尋問が行われる。

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2010.04.24

丸田祥三氏 「棄景写真剽窃被害」訴訟2

(長文です)

 丸田祥三氏が、小林伸一郎氏を著作権法違反で訴えた裁判は、東京地方裁判所627号法廷で4月22日13時30分、開廷した。裁判官3人による合議制だ。

 冒頭、2人揃って裁判官の前に立ち、本人確認と誓約書の読み上げを行った。裁判長は「2人で声を揃えて」というが、揃わない。

 尋問は、原告、つまり丸田氏から。自分側からの「主尋問」、続いて相手側からの「反対尋問」、補足質問、そして裁判官からの質問という順で行われる。

 主尋問は、質疑の形をとっているものの、自分たちの主張を改めて確認するものなので、基本的には地味なやりとりだ。

「いつ頃からカメラマンになろうと思ったんですか」
「学生の頃から廃墟を撮っていたら、カメラマンになっていたという感じです」

「自分が撮影した場所では、何がなんでも他の人が撮影してはいけないと思っていますか」
「思っていません。しかし、プロであれば、それまで誰も一瞥をくれなかったものに作品性を先に見出した労力に対して、ひと言ことわりを入れるといった配慮や礼儀が必要だと思います」

 といった具合に、自らの主張や立場を改めて明確に述べていく。

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2010.04.23

丸田祥三氏 「棄景写真剽窃被害」訴訟1

 生まれて初めて、東京地方裁判所に行ってきた。

 といっても、僕が訴訟に関わったわけではない。裁判を、傍聴してきたのである。

『棄景』(宝島社)など、廃墟写真で知られる丸田祥三氏が、同じく『廃墟遊戯』(メディアファクトリー)などの廃墟写真集を発表している小林伸一郎氏を相手に、自らの作品を「盗作」されたとして訴えた裁判だ。

 2009年1月の提訴から1年3カ月あまりが経過したこの日(4月22日)、東京地裁で初めて原告及び被告に対する尋問が行われた。被告である小林氏が出廷するのは、これが初めてだ。

 丸田祥三氏の立場から見た事件の経過は、こちら
 丸田氏のファンによる検証サイト
 ※小林氏や、小林氏の立場に立った発言は発見できなかった。

 僕が丸田氏を知ったのは、学生時代のことだ。それまでの記録的な廃墟写真とは一線を画した写真の数々。遠い、かすかな記憶を呼び覚ますような作品たちに、心を奪われた。

 以来、廃墟・廃線の写真といえば、丸田祥三氏と思っていた。数年前に「廃墟ブーム」が起きた時は、時代がやっと丸田さんに追いついてきたと思ったものだ。こんな事態になっているとは、最近まで知らなかった。

 正直に言えば、最初に検証サイトを見たときは、両者の写真が類似しているとは、さほど思わなかった。自分なりに丸田氏の作風を知っていたので、どの写真も、一目でどちらがどちらの作品かわかったからだ。

 しかし、先入観を排し、一歩引いた目で見れば、どの写真もよく似ているとも感じる。作品はどれも小林氏のほうが後から発表したものであり、信越本線丸山変電所の解説文では、丸田氏と同じ事実誤認を、小林氏も記述していたというのも気になった。

 写真に限らず、出版などのメディアでは、コンセプトや表現方法を借用する「パクリ」が横行している。先行作品に対する敬意や、表現上の大きな進歩があれば、問題にされることは少ないが、ただアイディアをコピーしただけの悪質な二番煎じも多い。

 小林氏の作品が、そうした悪質な「パクリ」にあたるかは現時点で判断できないが、こうした作品をそのまま発表するのは、写真家の倫理から見てどうなのか。

 小林氏は10年以上、丸田氏からの抗議に対して何ら返答をしてこなかったというが、盗作でないなら「誤解である」と真摯に説明すればよいのに、なぜそれを今日まで一切して来なかったのか。

 ネット上では、小林氏の主張はほとんど見ることができない。

 これは、自分の目で確かめたい……。

 ライターの末席に身を置く者として少なからぬ興味を抱いた僕は、4月22日13時、霞ケ関の東京地方裁判所を訪れた。

(つづきます)

追記:被害が確定しているわけではないので、タイトルにカッコを付けました。今夜は仕事に追われており、更新少し遅れます。

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