
氷点下7度の、凍えるような朝。
書道(ソド)という、文学的な名前の駅を訪れた。
小さな集落にある駅には、誰もいない。書道駅は、7年前に線路付け替えによって移転しており、今はこの場所にはないからだ。移設当初、旧駅は撤去される予定だったが、「魂火(혼불)」という韓国で有名な小説の舞台となったこともあり、地元南原市が買い取り、1932(昭和7)年の開業当時の姿に復元された。
鉄道趣味がさほどメジャーではない韓国だが、廃止された駅や線路を、鉄道公園として残す取り組みは、思いのほか活発だ。

駅構内は、ほぼ現役当時のままの姿で残されている。駅から100mほど離れた踏切脇には、今はやりのレールバイクが並んでいた。暖かい季節には観光客で賑わうのかもしれない。

駅舎は、一見かなりの年代ものに見えるが、前述の通り移転・廃止後に復元されたものだ。窓越しに中を覗くと、汽車時間表の黒板も再現されており、かなり真面目な復元駅舎である。外観も、新村駅などのようにやたらとピカピカにすることもなく、この駅が過ごしてきた、長い時間を感じ取れる建物になっていた。駅舎だけでなく、倉庫などの附帯施設も復元されているのが嬉しい。

現役の駅としても使えそうな、駅舎内の様子。中には入れないが、説明板なども見え、公開されることもあるようだ。

貨物ホームの向こうに見える小屋は、保線詰所。これも復元されたもので、ひとつひとつ説明板が設置されていた。

改札前には、腕木式信号機の信号てこが保存されている。立った状態にある「てこ」には、左からハングルで「上副出(上り副本線出発)」「下通(下り通過)」「下場(下り場内)」「下副場(下り副本線場内)」「上場(上り場内)」とあり、鉄道用語が日本とだいたい同じであることがわかる。僕にとっては、実に興味深い。

さて、現在の書道駅は、集落の向かい側、旧駅から歩いて3分ほどの場所にある。そちらへも、行ってみた。

坂の上にある駅舎は立派だが、よく見ると、すべての入り口がふさがれている。

これは、待合室の入口。貼られているのは、2008年7月1日から実施された無人化による利用方法についての案内だ。しかし、当駅は2004年7月15日から旅客の取扱を中止(全列車通過)しており、一体誰に向けた案内なのかは不明である。

立派なホームには、もう5年以上列車は停車していない。この駅が移転したのは2002年。実質、2年足らずしか使われなかったことになる。
韓国では、今、こうした列車の停まらない駅が増えている。むしろ、そういう駅のほうが現役の旅客駅よりも多いかもしれない。公社化以後、地域輸送から撤退し、都市間輸送に専念する方針とした結果である。

旧駅から見た、本線を走行中の上り「セマウル」
都市間輸送への特化はわかるが、こんな無駄遣いをしていて、コレイルは大丈夫だろうか。
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