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2010.05.14

水木しげる戦記選集「ああ太平洋」

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 Amazonで、水木しげるの戦記漫画選集「ああ太平洋」上下巻(宙出版)を購入した。

 水木しげるの、貸本漫画家時代の戦記漫画のアンソロジー。「ゲゲゲの女房」を見ている人なら、『少年戦記』に収録された漫画の本だと言えばわかるだろう。

 水木しげるの貸本時代の漫画は、怪奇ものは「墓場鬼太郎」をはじめ数冊持っていたが、戦記物は初めてだ。そもそも、水木サンの戦記漫画自体、かの名作『総員玉砕せよ!』と『昭和史』しか読んだことがなかった。

 上下2冊に分かれた大判の単行本には、太平洋戦争の海軍の闘いが、時系列で掲載されている。上巻は、主に太平洋戦争前期で、「山本元帥と連合艦隊」、「印度洋作戦」「珊瑚海海戦」「ミッドウェー海戦」、そして「ツラギ夜戦」などが収録されている。下巻は、日本が敗北への道を歩む大戦後期の物語で、「マリアナ沖海戦」と「レイテ沖海戦」が中心だ。

 ちょうど、今朝ドラで放映しているような、極貧時代に描かれた作品だが、どの作品も、今読んでも素晴らしい。

 この漫画には、「0戦はやと」のようなヒーローは登場しない。下巻におけるマリアナ沖海戦やレイテ海戦などでは、これ以上ないくらいに悲惨な闘いが描かれている。

 しかし、「戦争はいけないことです」といった、説教くさい文言も見られない。南雲忠一中将や栗田健男中将といった実在の提督に対しては、安易な批判をせず、「人間味あふれる名将」として描いている。いきなり、見開きで軍艦マーチの歌詞が掲載されていることすらある。

 にも関わらず、作品全体からは強い反戦のメッセージが貫かれている。ヒーロー系戦記漫画とも、左翼系反戦漫画とも異なる、水木漫画独特の味わいだ。

 鬼太郎でおなじみの「水木絵」とは全く違う、サインペンでスケッチしたかのような絵柄も新鮮だ。重 い絵なのに、擬音語は「どかん」だの「どぶん」だの、妙に軽いのも興味深い。

 「ゲゲゲの女房」を見ている人には、ぜひ読んでもらいたい作品だ。

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