
これまで、数多の店がチャレンジしては敗れ去った、韓国の日本式ラーメン屋。「ラーメンとはすなわちインスタントで、1500W程度あれば食べられるもの」という意識の強かった韓国では、5000~7000Wの生ラーメンは長らく受け入れられなかった。
しかし、ここ数年で状況は大きく変わっている。
このブログでも、2005年6月に梨泰院の「ラーメン81番屋」を紹介し、「かなり日本のラーメンに近づいてきた」と好意的に書いた。今考えれば、この頃から、ソウルのラーメンブームは始まったのだと思う。今では、市内を歩けば日本式ラーメン屋に当たるというほど、ラーメン屋が激増している。
さて、今日も大学路をぶらぶら歩いていると、一軒のラーメン屋が目に入った。「六本木」。さらに看板をよく見ると、「사가라멘」(サガラーメン)とある。佐賀ラーメンで、六本木。よくわからない。ありがちな店なのかと思い、通り過ぎかけたのだが……。
通りから見えた厨房に、目を引かれた。

……デボを使っていない?
デボというのは、多くのラーメン屋が使っている深型のざるだ。一人分ずつ、確実に茹でられる反面、狭いざるの中に麺を押し込むので麺が絡みやすい。また、いくら湯切りをしてもどんぶりに茹で汁が入ってしまう。プロの職人がいる店では、麺は直接鍋で茹で、平たい湯切りざるですくい上げるものだ。同じ分量をすくうのに技術が必要なので、マニュアルを使うようなチェーン店ではたいていデボを使っている。
それが、この店はデボを使わず、湯切りざるを使っている。職人がタッパで丁寧に麺をほぐし、鍋に直接放り込んでいく。実に手際が良く、日本のラーメン屋を見ている気分である。
あの人は、日本人ではないか。もしかして、期待できるかも。
と言うわけで、入ってみた。20席ほどの店内は満席に近く、客は見た限りすべて韓国人だ。
佐賀ラーメンというだけあって、ラーメンはとんこつが基本。「とんこつラーメン」5000Wを注文した。安い。
で、出てきたラーメンが、これだ。

紛う方なき、とんこつラーメンだ。とんこつにしてはあっさりしたスープに、やや柔らかめの麺。ごくごく標準的なとんこつラーメンで、なかなか旨い。突出した部分はないものの、とんこつ特有の臭みがなく、万人受けしそうな味わいだ。日本のラーメン屋でこれが出てきても、全く違和感を感じない。ちゃんとした、美味しいラーメンだった。
今まで、韓国でラーメンもどきを食べては失望してきただけに、ソウル市内でこれだけのラーメンを食べられるようになったことに、ある種の感慨を覚えた。
調べてみると、この店、佐賀県に7店舗を展開している、「佐賀ラーメン喰道楽」の契約店舗だった。詳しくは聞かなかったが、マニュアルだけでなく、職人も派遣しているようだ。
こんな風に、ソウルにきちんとしたラーメン屋が増えていくのは、なんだか嬉しい。
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