『私の頭の中の消しゴム』
「私の頭の中の消しゴム」。ネタバレあります。注意。
いきなり、テーマ曲が「NHK朝の連続テレビ小説 あすか」。
韓国映画に朝ドラのテーマ曲を使うとは、僕に対する挑戦だろうか。
ま、それはともかく。
日本のテレビドラマ「ピュアソウル」をリメイクしたこの映画。若年性アルツハイマーに冒されたキム・スジン(ソン・イェジン)と、建築デザイナーの夫チェ・チョルス(チョン・ウソン)の涙の愛の物語だ。
結論から言うと、あんまり感動できなかった。理由はふたつ。二人(とくにチョン・ウソン)がイケメンすぎて、前半のラブラブな展開にややシラケてしまったこと。そして、病が発症するまでに時間がかかりすぎ、肝心の闘病シーンが、かなり駆け足になってしまったことだ。
ひとことで言えば、全編を通してチョン・ウソンのプロモーションムービーである。建築現場で働くチョン・ウソンが、現場監督にかっちょよく啖呵を切る! 何もしてないのに、きれいな彼女(ソン・イェジン)をゲットする! なんだかよくわからないけど、すぐ上半身裸になる! いちゃいちゃする! やたらとアップで映る! いつのまにか結婚する!
……ま、とにかく順風満帆、幸せいっぱいの二人が、これでもかと描かれる。幸せの絶頂から、一気に不治の病に落とすための演出なのはわかるけど、完ぺきすぎて、「わかったわかった、勝手にやっててよ」と思ってしまうのだ。
これがチョン・ウソンのようなイケメン俳優ではなく、チャン・ヒョクとかユ・ジテとか、微妙に三枚目な俳優だったらもう少し感情移入できたんじゃないだろうか。やっとつかんだ幸せが、彼女の病気によってこぼれ落ちていく。そんな展開のほうが僕は好きだ。電車男の見過ぎなのかもしれないけど。
さて、そのチョン・ウソン演じるチェ・チョルスは、親の愛情に恵まれず、暴力性を内に秘めた男である。その凶暴性は尋常ではなく、「もしかしたら、相手は死んでしまうかもしれない」という行為が二度も描かれる。病気に冒されていく妻との愛よりも、こちらのほうが詳しく描かれているのはどういうことか。この暴力が、スジンに向けられることはついにない。もしかしたら、「相手の悪いところを知らないうちに別れる二人は、むしろ幸せ」というメッセージだったのかもしれない。
展開がやたらと駆け足になってしまったのは、全12回のドラマをリメイクしたためだろう。ドラマを均等に縮めるのではなく、幸せ絶頂の前半は思い切って縮めてほしかった。
純粋に、恋愛ドラマとしてみれば悪くはない。いや、ラストは全く意味不明だけど。「失われていく記憶と、それに抗う二人の愛」をもう少しじっくり見たかった。残念。
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Posted by: 音村 | 2005.10.31 09:08