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2004.03.17

韓国スキージャンプを訪ねて5

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▲ファイナルには進めなかったチェ・ヨンジク

 試合は、前日の不手際がウソのように順調に進んでいった。風の向きがめまぐるしく変わるので中断が多いが、進行自体はきちっとしている。アナウンスにもミスがない。最初のグループは良い向かい風に恵まれ、K点越えが続出。ノルウェーのヨケルソイ128mを筆頭に、葛西紀明121m。逆に、フンチョルは108mでグループ6位以内に入れず、ここで敗退した。次のグループでも、韓国人はふるわない。90m。だんとつの最下位でカン・チルグ敗退。子供たちのため息が聞こえた。

 3つめのグループから風が怪しくなってきた。このグループの韓国選手、キム・ヒュンキは、すでに5位まで表示できる電光掲示板から消えてしまっている。ファイナル進出は上位6人だから、絶望的だ。しかし、このころから強い追い風が吹いてきた。後半の有力選手が、ぽとぽと100mの手前で落ちる。後の選手になるほど飛距離が伸びなくなった。

 「かげり! 今、6位ヒュンキって言わなかった?」

 韓国語のアナウンスだからよくわからなかった。英語のアナウンスを聞いてみよう。1位、ドイツ・ウアマン。2位、フィンランド・ハウタマキ。4位、佐藤昌幸・・・

 「シックス…キム、ヒュンキ。フロム、コリア!」

 アナウンスが、ひときわ大きな声でコールした。やった! ヒュンキ、ファイナル進出だ! 観客からも、大歓声があがった。

 後ろからの強風で、条件がどんどん悪くなっていく中、最後のグループ。ドイツのベテラン、イエックレが121m飛んだ以外は、まったく距離が伸びない。韓国のチェ・ヨンジクはそれでも着地を粘り、最悪の条件下で101m。長野五輪の時とは、別人のように安定した飛形だ。もちろん、葛西やアホネンのジャンプとは、次元が異なるが…。風はさらに悪くなっていった。

 ポーランドのアダム・マリシュ92m、シュミットはなんと79mに失速。有力選手が次々脱落し、終わってみればヨンジクは5位。ファイナル進出が決まった。次第に周囲が暗くなる中、200人の大歓声がジャンプ台にこだました。

 満面に笑みをたたえたヒュンキとヨンジクが、リフトへ向かって走っていく。多くの人が、彼らにねぎらいの声をかける。この時点で、ワールドカップのポイント獲得は決定なのだ。とくにヒュンキにとっては、初めてのポイント獲得である。さあ、条件がこれ以上悪くならないうちにファイナルラウンドだ。

 ファイナルラウンドが始まり、5人飛んだところで風が一層強くなった。手元のメモ帳が飛ばされる。照明がともり、ナイターになったジャンプ台。もはや風は「突風」だ。これでは、競技は危険である。

 「ジュさん、ファイナルラウンドは、キャンセルになるかもしれません」

 僕がそう言うのとほぼ同時に、場内アナウンスが流れた。

 「あ! ほんとだ! キャンセルって言ってる…。かげり、ファイナルラウンドがキャンセルになったら、どうなるの?」
 「たしか、ファーストラウンドの結果が最終結果になるんですよ」
 「そっか、じゃあ、ヒュンキとヨンジクは、入賞決定ね!」
 「そうですよ。やりましたね」

 消化不良ではあったが、結果は結果だ。僕たちは、韓国勢の健闘をたたえて喜んだ。優勝は、ノルウェーのヨケルソイ。初優勝だ。日本の葛西は4位。しかし、一向に表彰式が行われる気配がない。観客もいなくなり、生中継をしていたドイツのARDや韓国KBSも、機材をあっというまに片づけてしまった。さっきまでのにぎわいがウソのように静まり、うすら寒い突風だけが吹き荒れるジャンプ台…。

 「とりあえず、本部へ行ってみましょう」

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▲あっという間に無人になった競技場

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